
カニおじさんの話によると、ここは<ディメイション>という世界で現実とは次元が異なる所にあるらしい。
そして、私は『全てはここから』に飲み込まれてこの世界に来たのだが、その時記憶を失くしてしまい自分がどこの誰なのか全くわからなくなってしまった。
<ディメイション>の世界では私のような現実の肉体をもった者は、ゆっくりとではあるが徐々に何かに変化していくという。何になるかは誰にもわからない。<ディメイション>の中でのバランスとかその人の魂とか精神が関係あるらしい。
カニおじさんは以前にも私のように現実からこの世界にやってきた人に合ったといって、話をしてくれた。
その人は記憶がそのままであったため現実に帰りたがった。しかし、その方法がわからず毎日嘆き悲しで、その人は<ディメイション>の変化の中でいつのまにか『悲しい少年』になってしまった。そして、さらなる変化の中で彼は現実の頃の記憶も失くし、また何が悲しいのかもわからなくなった。この世界のどこかで彼は今も忘却の檻の中で悲しいままでいる。