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「吟遊詩人」

吟遊詩人

「全てはここから」に飲み込まれて、現実からこの世界<ディメイション>にやって来た。
そのために記憶を失くし自分がどこの誰なのかわからなくなった。
<ディメイション>では、現実の肉体はゆっくりとではあるが変化してゆく。何になるかは誰にもわからない。


草むらから姿をあらわしたのは、「吟遊詩人」でした。詩人は驚いた様子で聞いてきました。


「『雨と風にうたれる女』にホントに会ったの?」


(うん)とうなづいたけど、詩人は信じられないようでした。
そして、なんだか怒ったような口調になりました。


「彼女は現実の世界で、ある国のお后だった方だ。でも、歳を重ねるにつれ若かりし頃の美貌は見る影もなくなり、夫である王様に捨てられたんだ。そのショックでだろう、この世界<ディメイション>にやって来たんだ。そして、彼女は<ディメイション>の変化の中で『風と雨にうたれる女』となって風と雨の中に宿っているんだが、その姿を誰にも見られたくないようで、見た者は風で粉々に千切られて血の雨となって戻ってくるんだぞ。」


(・・・なぜそんなにムキになるの?)


「え?」というと、詩人は急に顔つきが変わってモジモジし始めました。
「それはさ、僕のこの姿を見てわかんないかなぁ。」詩人はふざけているようではありませんでした。


「風と雨の中に聴こえる彼女のその声を聴いたとき以来、僕はこの姿に変わってしまったのさ。つまり、僕は彼女に恋をしてるのさ。」


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