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「陽の水槽に立つ植物たち」

陽の水槽に立つ植物たち

「全てはここから」に飲み込まれて、現実からこの世界<ディメイション>にやって来た。
そのために記憶を失くし自分がどこの誰なのかわからなくなった。
<ディメイション>では、現実の肉体はゆっくりとではあるが変化してゆく。何になるかは誰にもわからない。


詩人が指差すところに近づいてゆくと、森の木々の中でキラキラと輝くものが見えてきた。


(これは?)


目の前にあらわれたのは「陽の水槽にたつ植物たち」だった。


「説明は後でするから、とりあえず入ってみてよ」
ボードから降りると、詩人はその水槽の中に入っていった。
詩人がその水槽の中に入ると、詩人の姿がだんだんと消えて見えなくなった。


(あれ、どこ?)
キョロキョロと水槽の中を捜したが、見つからない。


「さぁ、君も早く」
水槽の中から詩人の呼ぶ声がした。けど、詩人の姿は見えない。
どうしようか迷っていると水槽の中から水を滴らせた詩人が出てきた。


「しょうがないな」
詩人は背後にまわると背中を押して、嫌がるのを強引に水槽の中に押し込んだ。
すると、手足の先からだんだん透明になって見えなくなり、すぐに体が丸ごと見えなくなった。
そして不思議なことに、水の中にいるのに呼吸がふつうに出来ている。


見えなくなった自分の体を手で触って確かめていると、背後から


「これが、『陽の水槽にたつ植物たち』さ」
と詩人のうれしそうな声がした。


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