
「全てはここから」に飲み込まれて、現実からこの世界<ディメイション>にやって来た。
そのために記憶を失くし自分がどこの誰なのかわからなくなった。
<ディメイション>では、現実の肉体はゆっくりとではあるが変化してゆく。何になるかは誰にもわからない。
「陽の水槽の中にたつ植物たち」の中で透明になって見えなくなったが、触ると感触はある。
見えなくなった詩人が後ろから説明してくれた。
「この水槽の植物たちは、根から水分を吸い上げるのではなく、逆に光合成で作ったエネルギーで根から水を吐き出すんだ。その水はこんな風に自然と水槽の形になってそこに入るものを癒す力があるんだ。」
詩人に無理に押し込まれた水槽の底から、水面に向かってゆっくりゆっくり体が浮き上がってゆくのがわかる。
すると、体から痛みや疲労が抜けて、軽くなってゆく。
(「あー、気持ちいい」)
水の中から、陽の光にキラキラと輝く水面を見ると、不思議な感覚がした。
(・・・この光景・・・以前にもどこかで・・・)
あまりの気持ちよさに、気が遠くなってゆく。
気づくと、いつの間にか水槽の水面をプカリプカリと漂っていた。
水槽から出ると、ボロボロだった体から痛みはすっかり消え、傷も治っていた。
しかし、体のあちこちがいつもの肌の色と違っていた。
自分の体にもとうとう<ディメイション>の変化が起こっていたのだ。