
[前回の続き]
海図にある六つの航路を光の<ディメイション>でなぞった。すると、海図にそれぞれの潮の流れが輝きながらあれわれ、一箇所で交わった。それが、中心海だった。
フック線長は中心海へ行くため私を連れ、いそいそと森を後にして近くの海岸に泊めてあるという海賊船へ向かった。
その道中線長は、<ディメイション>の変化をした体のことについて教えてくれた。
「いいか、貴様のその体はもう現実にいた頃の肉体とは違う。別物だ。区別するためにこの世界では、変化体と言っている。」
(変化体?)
「そうだ。オラ様が森でチロチロと口から火を出したのを覚えているか?」
(ああ、うん)
暗くなった森でたき火をしようとして困っていたら、線長が口から火を出したのを思い出した。
「現実の肉体ではそういう事は出来ない。が、変化体になれば自分の思いに変化体が応えてくれるようになる。つまり、火が欲しいと思えば火を吐くように変化体が反応するし、暗くて光が欲しいと思えば変化体は光を放つようになる。」
前から感づいていたことだが、やっぱり線長は自分の目的である中心海に行くためにわざとキツイ言葉を投げかけ私を森の暗闇の中に引っ張り込んだんだ。そして、暗闇の中で私を一人にして光の変化体になるのを待ったんだ。
(なんてひでえオジサンだ。自分が光の変化体になれば済むことじゃないか)
「それが出来れば、小僧なんぞに用はねーや。変化体にも限界がある。オラ様がいくら暗闇の中で光が欲しいと思っても、火か炎にしかならない。光にはなれねーんだ。」
(うーん・・・)そのまま信じていいものかどうか迷ってしまう。
「変化体が反応するのは、思いの強さとその質の『コラボ』によるんだ。強さはどうにかなるんだが、質ってのは努力してもなかなか出来ないもので、・・・才能と言っていいかもしれん。オラ様の思いには光の質がないんだろう。」
(強さと質・・・才能・・・)
わかるような、わからないような・・・頭の中がいっぱいになって、あふれそうになってきた。
[次回に続く]