
[前回の続き]
変化体の傷の治りは早かった。治りたいという思いに反応し、少しの間で傷は完治していた。
だが、(海賊船へ早く行きたい)という思いには全然反応しない。心底思ってないからだろう。
そんな私を残してフック線長はエリマキトカゲの姿になって、一足早く海賊船へと向かったのだ。
(どうして、何の反応もないんだろう?)
私の変化体は相変わらず、白熱した光の変化体のままだ。
きちんと(海賊船へ早く行きたい)と思ったはずだ。だが、自分にウソをついたのかも知れない。
本当はもっとここでゆっくり休んでいたかった。傷は治ったけど、心が何だか疲れていた。、変化体がどうの、思いの強さとか質とか、おまけに現実に戻れるタイムリミットが一年だ。
(一体なぜ、自分だけがこんな目にあわなくちゃならないんだ?)
ふと考えてみると、ぶつけようのない怒りが湧いて来た。
(もうどうでもいいよ。早く家に帰って眠りたい。線長なんてエリマキトカゲでも何でもなって勝手に行ってればいいのさ。知ったこっちゃないさ。)
(『お休みなさい』)
私は横になると、深い眠りの中へ落ちて行った。そして、不思議な夢を見た。
「君は誰?」
(?私は私だけど・・・君こそ誰さ?)
「線長に初めて会ったとき、足がブルブル震えたのは君なの?」
(あの時は、怖かったんで震えただけさ)
「でも君はあの時、自分の足の震えを止めようと思ったんじゃないの?」
(ああ・・・そういえば、そうかもしれない)
「君がそう思ったのに震えは止まらなかった。まるでもう一人、別の君がいるようだね。」
(私は一人だよ。ほかの私なんている訳ないよ。それより君こそ誰さ?どうしてここに居るの?)
「変化体に反応を起こさせるには、君は僕を無視できないよ」
変な夢を見てすぐに起きてしまった。
少し眠っただけなのだが、おどろくほど元気が出てきた。
(悔やんでみても仕方ない。よーし、線長を追いかけるとするか)
大きく背伸びをすると、再びやる気になって線長のマネをしてみようとした。
エリマキトカゲになろうと構えたがダメだった。
(なんだかエリマキトカゲって・・・あんまりなりたくないなぁ・・・)
あまり好きじゃものにはなれないのかも知れない、と思った。
その時突然、羽の生えたブーツのイメージが閃いた。
すると、私の両足に羽が生えて、ブーツの形になった。
(そうか、そういうことか!)