
[前回の続き]
海賊船へ向かった線長を追いかけようとしたが、思うように変化体に反応を起こせなかった。
その時、羽が生えたブーツのイメージが閃き私の両足に羽が生え、ブーツの形になった。
やっと変化体の反応のヒントがつかめた。ウソやあまり気の進まない思いには反応しないようだ。
自分にジャストフィットする、そういう思いの場合だと変化体はすごい反応を示す。
(何だか足が軽い。まるで、浮いているようだ。)
羽の生えたブーツでちょっと地面を蹴ってみた。
(な、何だ??)
何が起こったのか?と、辺りを見渡すと後方にさっき自分が寝ていた場所があった。
(・・・まさか!)
そのまさかだった。このブーツで軽く蹴っただけで、あっという間にはるか前に進んでいたのだ。
(何だ、これ!!!)
興奮してしまった。冷静になるのを待って軽く走ってみることにした。
すると、森の木々が残像になって後方に消えてゆく。
早送りのように次々に見える景色が変わる。
(す、すごいやコレ!!)
まるで自分の体が突風になって森の中を吹きぬけてゆくような感じだ。
しばらくすると、前方に土煙を巻き上げて進むフック線長の姿が見えた。
すぐに線長の横に並んだ。
線長は私を二度見した。海賊である線長の驚く顔は傑作だった。
「小僧ー、やるじゃねーか。もうちっと手を抜いてやろうかと今思っていたとこだが、」
と、線長はグンとさらにスピードを上げ先に行ってしまった。
しかし、こっちも負けずに加速するとまた追いついてしまった。
(線長ー、バテバテですか?先行っちゃいますよ?)
「はぁ、はぁ、少しオラ様より速いからって小僧、いい気になるなよ。」
(いい気になんてなってませんよ)線長を追い越して、先に出ようとした。
だが、変化体は正直だ。得意な気持ちに反応し体が宙に浮き上がってしまった。
そして、木の枝に引っかかり前に進めなくなってしまった。
「小僧!変化体は『あなたを見守るものと、脅かすもの』であることを忘れるな。そんな浮ついた気持ちになれば、今度はお前自身を脅かすぞ。」
また、線長は先に行ってしまった。