
[前回の続き]
いよいよ最高の秘宝が眠る中心海へ向かうことになった。
フック線長はガメラというクジラのように大きい亀(海賊船)に乗り込み、一方の私は変化体に慣れていないことを理由にガメラに乗ることを拒否され、泳いでゆくことになった。
ガメラはその巨体からは想像もできないスピードで、海岸線に沿って突き進んでゆく。
私もガメラの後を追って泳ぐ。しかし、その距離はみるみる広がる。
やはり変化体に反応を起こさなければ、このままどんどん離されてゆく。
(イメージだ。自分にジャストフィットするイメージだ。それに思いを込めればさっきの羽の生えたブーツのように変化体は必ず反応する。でも、何だろう?海を泳ぐ・・・うーん)
海を泳ぐ生き物をあれこれ思い浮かべてみた。しかし、何だかピンと来ない。
(魚・・・イカ・・・タコ・・・何だかなぁー)
その時突然、マンボーのイメージが閃いた。
(これだ!)
変化体はすぐに反応を起こして、私の体はマンボーそっくりになった。
(ヤッター!これでガメラに追いつけるぞ)
ところが、マンボーの体になったせいか頭の中がだんだんとボーとしてきた。
そして、目もうつろになり全体的にボヤーっとした感じになって、ボヤーっと泳ぐのだった。
(・・今日も・・・いい・・天気・・・・だな・)
恐ろしいことに言葉遣いまでマンボーそっくりになってしまい、トロトロとした口調になった。
「コラー、何をそこでチンタラしてる!」
遠くのほうから線長の怒鳴る声が飛んできた。しかし、
(・・・べつ・・・いい・・・・じゃん)
マンボーはあまりにもマイペースだ。線長のことなんかハナクソみたいにしか感じない。
心のどこかでこれじゃいけないと思うのだが、マンボーの変化体になってしまうと、
(・・・べつ・・・・いい・・・・じゃん)と、思い直してしまうのだ。
これはもしかしたら大変なことになったんじゃないか、と『不気味な不安』がつのって来た。
しかし、それはもう後の祭りだった。