
[前回の続き]
秘宝が眠る中心海への航海がいよいよ始まった。
フック線長が乗りこんだガメラは海岸線を泳いでいたが、私はそのスピードについて行けなかった。
そこで、自分の変化体に反応を起こしマンボーそっくりの体になって追いつこうとしたのだが、大変なことになった。
マンボーの姿になってしまったため海面を漂うようにユッタリと泳ぐ。
先を行く線長とガメラの姿がだんだん小さくなって離れてゆく。
これ以上離されたら、その姿を見失ってしまうと慌てた。ところが、マンボーの変化体はその事をすぐにどうでもいいように感じてしまう。
(・・・べつ・・・いい・・・じゃん・)
まるで、睡魔と闘っているときの感じとそっくりだ。
眠ってはいけない、眠ってはいけないと思うが、体は疲れてとても眠い。
目は開けているが、コクコクと頭は前後にゆれる。
気持ちに体がついてゆかない状態なのだと思う。
マンボーの変化体に四苦八苦していると、近くを泳いでいたマンボーの群れが集まってきた。
仲間だと思ったのか、体を寄せて来て親愛の情を伝えてくる。
「・・チャチャ・・『君も』・・チャチャ・・『踊ろう』・・・チャチャチャ・」
(ち、違うんだ。本物のマンボーじゃないだ。)
そう言っても、マンボー達にはなかなかわかってもらえない。
それどころか、「チャチャチャ、チャチャチャ」とサンバのリズムで私を取り囲んでみんな踊り出すので困ってしまう。
段々と事の深刻さがわかってきたが、マンボーの変化体になっているためどうすることもできない。
線長が気付いてくれたら何とかなるかもしれない。
その時、はるか前方にいたはずの線長がガメラに乗って引き返して来た。