
[前回の続き]
マンボーそっくりの変化体になったことで、オールナイトマンボーダンスに一匹のメスのマンボーから誘われた。
彼女の名はリリーと言って、とてもセクシーなくちびるをしていた。
リリーはオールナイトマンボーダンスが行われる会場に着くまでの間いろいろと教えてくれた。
それによると、オールナイトマンボーダンスはメスのマンボーの産卵の時期にオスのパートナーを探すため、年に一回行われる大事な儀式であるらしい。
マンボーダンスの前半は、各々気に入ったパートナーを見つけるためマンボーダンスを踊りながら、お互いの相性や親密度をダンスを通じて確かめ合う。
そして、後半は一生を共にするパートナーに巡り合えた事を『古代へさかのぼる』ご先祖に感謝し報告するため夜が明けるまで踊るのだ。
泳いでいるリリーに私は横からたずねた。
(どうして、自分なんかを誘ったの?)
リリーは少し困ったように、くちびるをすぼめた。
「・・・ご先祖様たちは、大勢の仲間が集ってマンボーダンスが行われることをとても喜ぶからよ。それに・・・」
(それに・・・?)
「・・・何でもないわ。それより、もう始まる頃だわ。急ぎましょう。」
リリーのセクシーなくちびるはそう言って、話を逸らした。
「ほら、見えてきたわ」
海の中がだんだん暗くなってきた時、リリーの見つめる先に、岩でできた巨大なドーム会場がたくさんの光クラゲの中でライトアップされて見えた。
入り口にはたくさんのマンボーが並んでいた。リリーと私は最後尾につくと、順番が来るのを待つことにした。
待っている間、周りのマンボーのことが気になって様子をうかがった。
メスのマンボーはみんなおめかししてキャッキャっとはしゃいでいる。
一方オスのマンボーはメスとは対照的にみんなボーっとして無表情に見えた。
「みんな緊張して固くなっているんだわ。ウフフフ」
順番がきて、ようやくリリーと共に中に入ることができた。
会場の中に一歩足を踏み入れると、熟練のマンボーオーケストラによるアップテンポなマンボーミュージックがドームの中いっぱいに響いていた。
そして、若いたくさんのマンボーたちの熱気でドームの中はムンムンとしていた。