
[前回の続き]
セクシーなくちびるのマンボー(リリー)と一緒にオールナイトマンボーダンスの会場の中へ入った。
会場の中はアップテンポのマンボーミュージックが流れており、たくさんの若いオスとメスのマンボーたちの熱気で満ちていた。
たくさんのオスとメスのマンボーが、ドーム型の会場の中をマンボーを踊りながら回遊していた。
それに混じって光クラゲがいたるところに浮遊して、きらびやかな光を放つ。
リリーと回遊する流れに乗って、マンボーを踊った。
しかし、私はダンスをうまく踊れない。ステップを外して何度もリリーの体に触れてしまう。
リリーは初め、緊張のためだと思って笑ってくれていたが、次第に不機嫌になってきた。
「どういうつもり?」
リリーはそのセクシーなくちびるをとがらせて、私を見つめる。
「私のことが嫌いなのね」
その目には涙がにじんでいた。
(いや、違うんだよ!これには訳が・・・)
「もう、いいわ!マンボーなのに少しもマンボーが踊れないなんて信じられない!!」
リリーは私を残して他のオスのマンボーのところに行ってしまった。
(どうしよう・・・行っちゃった・・・)
もともと人間だ。マンボーじゃないんだ。ただ、マンボーの変化体になっただけなんだ。マンボーなんて踊れるわけないよ。
(最初にちゃんと、自分の正体を明かしておけば良かったんだ。リリーに嫌われたくないから黙っていた自分が悪いんだ。)
やはりリリーに正直に話そう。そして、彼女の審判を受けよう。
しかし、マンボーとはいえ、この世界に来てはじめて好きになったリリーのことを想うと、自分のことを正直に話せる自信がない。
(苦しい。誰かを好きになるって、こんなにも苦しいのか!)
頑張ってリリーに近づいてみた。彼女が振り返り、目と目が合う。体が動かなくなってそれ以上近づけない。
リリーはプイと顔をそむけ、遠くに泳いで行く。
(ダメだ!話そうと思うのに、話せない!)
いつの間にか、恋の『ジレンマ』に陥っていた。