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「海の中にひそむもの」

海の中にひそむもの

[前回の続き]
好きなパートナーを探すため一晩中踊り続けるオールナイトマンボーダンスにセクシーなくちびるのマンボー(リリー)と共に私も参加した。
だが、もともとマンボーでない私はダンスをうまく踊れずにリリーを怒らせてしまった。彼女は別のマンボーのところへ行ってしまった。
正直にウソのマンボーであることをリリーに告白しようとしたが、もうその時には彼女に恋をしていた。嫌われると思うと告白できなかった。

恋のジレンマに陥っていた。好きになればなるほど、嫌われることが怖い。
(どうしよう・・・)
パートナーを見つけて楽しそうに踊るマンボーたち。
私はそれから逃げるように、一人その場を離れた。

そのまま時間は過ぎて、いつの間にかマンボーたちはお互いのパートナーを探し終え、甘いムードの中で体を寄せ合い愛を確かめ合っていた。
会場の片隅からその光景を眺めていると、リリーがほかのパートナーと私の目の前を通り過ぎてゆく。
もう私のことなんか忘れ、幸せそうにパートナーに寄り添うリリーの姿を見ると、心がしめつけられ苦しかった。

もう彼女に本当のことを告白する必要はなくなった。彼女は幸せなんだ。それでいいのだ。
恋に破れた者は邪魔にならぬよう、ただ去るのみだ。

会場を後にしようと、出口に向かう。
(もう、もう、マンボーなんかに一生なりたくない!)
足取りは重く、出口が遠く感じられる。

やっと出口にたどり着いた時、表の方からギュルギュルと耳障りな音がした。
その音は次第に大きくなってアッという間に会場の中に入ってきた。

それは『海の中にひそむもの』の仕業だった。彼らはその硬い貝殻をギュルギュルと回転させ会場の入り口を粉々に破壊して進入してきた。
その付近にたむろしていたマンボーたちは突然のことに驚いて、口をポカンと開けボーっと立ちすくんでいた。

「オイ!マンボーども、いいかよく聞け。隠し事は一切なしだ。お前らの中でスキャニングシステムのことを知っている者があるはずだ。そいつに用がある。そいつをここに連れて来い」
そう言うや否や、奴らの中の一匹がボーっと立ちすくむマンボーに、その硬い貝殻をギュルギュルと回転させアタックしてきた。
アタックを受けたマンボーは会場の壁に激しく叩きつけられ、倒れた。その体には無数の傷が生々しく残っていた。

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