
[前回の続き]
好きなパートナーを探すため一晩中踊り続けるオールナイトマンボーダンスは、パートナーを探し終えたカップルたちにより静かに幕を降ろそうとしていた。
ところが、そこに突然そのムードをぶち壊すものが現れた。「海の中にひそむものたち」といって、彼らは通称「海のギャング」と呼ばれる組織の一味だ。
彼らは目的のためなら手段を選ばない。すでにマンボーが一匹、奴らの貝殻アタックで吹き飛ばされ倒れた。
「いいか。俺達は容赦しねーぞ。甘く見てるとコイツみてーになるからな。わかったら、スキャニングシステムを知ってる奴を早く連れて来い」
出口付近にいたマンボーたちはみんなオロオロして、右往左往して『パニック』に陥った。
会場の中で甘いムードに包まれお互いの愛を確かめ合っていたマンボーたちも、踊るのをやめて怯えている。
(何なんだ、コイツら?)
出口にいた私は、奴らを警戒しながら吹き飛ばされ倒れたマンボーにこっそり近づいた。
回転する貝殻で負った傷口からは、おびただしい量の鮮血が流れており、瀕死の状態にある。
「こうなりたくなければ、早くスキャニングシステムを知っている奴を連れて来い。そうしなければ、コイツはこのまま死んでしまうぞ」
しかし、マンボーたちにはスキャニングシステムという言葉の意味がわからないようだ。
そんな言葉を始めて耳にしたようで、何のことかわからず困り果ててオロオロするばかり。
「ボス、コイツら全然知らないみたいですぜ。どうします?」
しばらく様子を見ていた奴らの手下の一人が、ひと回り大きい貝殻に近づき、卑屈な笑いを浮かべて尋ねた。
「全員、殺っちゃいますか?ヒヒヒ」
「もう少し痛い目にあわせろ。何を考えとるかわからん。案外こっちを手玉に取っているのかもしれん」
ボスと呼ばれた貝殻は中からくぐもった声で命じた。
海の中にひそむものたちは再び貝殻の回転を始めると、逃げようとするマンボーたちに背後から容赦なくせまる。
悲鳴がダンスミュージックの鳴り止んだ会場中に広がる。
「やめて!!」
その時突然、ダンスフロアーから一匹のマンボーが出口に向かって猛烈な勢いで泳いで来た。
(リリー!?)
それは、セクシーなくちびるを強張らせたリリーの姿だった。
「みんなゴメン。わたし、知ってるの。スキャニングシステムのこと。でも、それは誰にも言っちゃいけないって、亡くなったパパに言われたの。でも、これ以上みんなが傷つき倒れて行くのを黙って見てられないの。ねっパパ、リリーを許して」
リリーの瞳からキラキラと輝く涙が頬をつたった。
「ボス!間違いない、コイツですぜ。光の遺伝子をスキャニングシステムで受け継いでる」