
[前回の続き]
光の遺伝子。それは不思議な光の力でその遺伝子を受け継いだものを守る。マンボーたちはその遺伝子を代々受け継ぎ、絶滅の危機を乗り越えてきた。
だが今、その光の遺伝子を受け継いだリリーは、「海の中にひそむものたち」に取り囲まれ追い回される。
彼らは光の遺伝子の継承のシステム、スキャニングシステムによって守られた光の遺伝子を何とかして奪おうとしているのだ。
「スキャニングシステム、やっかいなシステムだ。苦しみを分かち合う思いによって光の遺伝子を代々受け継ぐ。聞いただけで気持ちが悪くなる」
身震いしたボスは、ペペっとつばを吐いた。
そして、リリーを追い回す手下たちに命じた。
「いいか、殺すなよ。命の危機を与えるのだ。嫌と言うほど怖い目に会わせろ。そうすれば、光の遺伝子は光の文様としてその体に浮き出てくる」
「その時にこそ、このプロトコルランデブーを用いる」
リリーを取り囲んで追い回す手下たちは貝殻をギュルギュルと激しく回転させて、リリーに近づいては離れ近づいては離れてを執拗に繰り返す。
「キャーー!やめて、お願い。近づかないで。」
取り囲まれ、逃げることもできず命の危機に何度もさらされるリリー。
その姿を見ていると、ダンスの下手さに愛想をつかされたことなど忘れていた。
(やめろー!)
私はもう黙って見ていられなくなって、リリーを追い回す手下の一匹に体当たりした。
だが、激しく回転する貝殻で弾き飛ばされ、ダンスフロアーに叩きつけられた。
(こいつら、許せない。・・・でも、マンボーたちもどうしてリリーを助けようとしないんだ?黙ってみているだけなんだ?)
遠巻きにリリーを見ているマンボーたちは、あまりに無力だ。ただ哀しそうにリリーを見つめることしかできない。
貝殻でえぐられた傷口から鮮血があふれ、倒れたまま動けなくなった。
「ボス!全然ダメです。何にも出てきませんぜ。光の文様とやらがこれでホントに出てくるんですかね?」
リリーを追い回すのに疲れてきた手下たちは、『飽きてきて』いる様子だった。
「わかったような口をきくな、黙って続けていろ」
ボスもイライラして、貝殻の中に引っ込んでしまった。
「いつまでも、こんな生ぬるいやり方やってられっかよ。要は、死ななきゃいいんだろう。死ななきゃ。かすり傷つけるくらいならなんともねーだろうよ」
せっかちな手下はニヤリと笑った。そして、息も絶え絶えでもう逃げることもできないリリーに近づく。
回転する貝殻はリリーの体を鋭いメスのようにえぐる。
白い肌は裂け、中から一筋の血が流れ海の中ににじむ。
遠くから見守るマンボーたちは微動だにせずに、目を大きく見開いたまま「オッ、オッ」と哀しそうに嗚咽し泣くのだった。
その時、リリーの体内から鼓動を打つように謎の光が明滅を始めた。