
[前回の続き]
海の中にひそむものたちに追い回されて何度も命の危険にさらされたリリー。息も絶え絶えになったその体を激しく回転する貝殻が容赦なく傷つける。
それをただ哀しそうに見守るマンボーたちの目に、リリーの傷口から流れる血が映る。
だが、ついにリリーの体内に宿る光の遺伝子がついに発動する。
リリーの血が海の中でにじみ、霧のようにもやがかかっている。
すると、それを切り裂くまぶしい光がリリーの体内から発せられ、あたり一面に広がる。
「うわーー!」
あまりのまぶしさに誰も目を開けていることができない。
「な、何だこれは?」
まぶしい光がおさまり、やっと視界がきくようになってそこに現れたのは、まるで刺青のようにくっきりと、光り輝く文様が浮き出た異様なリリーの姿だった。
光の文様は、万華鏡のように光の色を様々に変化させながら輝く。まるで生きているように。
「・・・・」
リリーは黙ったまま海の中にひそむものたちを見つめている。何だか以前のリリーと様子が違う。
遠巻きに見ているマンボーたちもリリーの只ならぬ様子にオドオドして落ち着かない。
「やったぞ。ついに光の文様が浮き出た。これで光の遺伝子が手に入る。ボス出番ですぜー」
だが、ボスは貝殻の中に引っ込んだままで何の反応もない。
ボスに知れせに手下がリリーの横を通ろうとした時、
「光の遺伝子を受け継ぐものは、お前たちではない」
リリーは突然、腹の底に響くような何十もの声が重なった複重声を発した。
そして、行く手をさえぎるように手下の前に立ちふさがった。
「さっきまで逃げてたヤツがよく言うぜ。邪魔だ。どけよ」
行く手に立ちふさがるリリーを手下が突き飛ばそうとした時
「邪魔はお前だ!!」
リリーの体から、まるで地鳴りのような怒号が発せられた。
次の瞬間、リリーの体に浮き出た光の文様から謎の光が大量に発せられ、その手下の体のまわりを覆うように包む。
「何だ??」
「身をもって知るがいい。影のないものは存在できないことを」
手下の体は、すっぽりと光の球体の中に閉じ込められた。
そして、光に包まれたその体から、まるで絞り取られるように影が消えてゆく。
「う、う、う、・・・」
苦しむ手下の体から影が完全に消えたとき、手下の体は、ミクロ微粒子の『淡いシャドー』となって、粉々に砕け散り消滅した。
手下の残された貝殻が海の底に沈んでゆく。
それは、あっという間の出来事だった。