
[前回の続き]
光の遺伝子を奪おうとしたものたちは、その光の遺伝子の圧倒的な力によって次々消されてゆく。
一方、傷つき倒れていた仲間のマンボーは優しい光に包まれて回復する。
私もその光に包まれ、体の傷は癒え元気になり、やっとマンボーの変化体から元の体に戻ることができた。
そして、リリーの体を借りて現れている光の遺伝子の正体は、過去の全てのマンボーの意識の集合体、集合マンボーであると言う。
(過去の全てのマンボーの意識の集合体、集合マンボー?)
光の文様が現れてから、リリーの様子が変わったのはわかっていた。
声は細くて高い声から、何十もの声が重なった複重声に変化し、顔つきや仕草からもどこか威厳のようなものが漂っていた。
「我々は、過去にさかのぼっても、今のように無力であった。逃げることも、戦うことも、考えることも他の生き物に勝ることはない。
我々は強いものによって淘汰されるばかり。死んでゆくものたち。ただ涙を流し見守ることしかできない。
過去から続く我々マンボーの苦しみ、死んでいった仲間への思いが、いつしか光の遺伝子となり、子孫を守護するようになった」
(この世界<ディメンション>は、思いの強さや質によって体に変化が起こる。無力で何もできないマンボーたちは、過去、言葉にできない思いを重ねてきたのだろう。
そして、仲間を失う無念さや子孫の無事を願う思いが積み重なり、いつしか光の遺伝子に変化したのかもしれない)
ふと、海でマンボーたちにはじめて出会った時のことを思い出した。
マンボーの変化体になって、とまどっていると、そんな私を見つけて、一緒に行こうとダンスに誘ってくれた。
(はじめて会ったのに、優しく接してくれて嬉しかったなぁー。どこの誰かもわからないのに。その『優しさ』が、もしかしたら、マンボーに光の遺伝子を与えたのかもしれない。本当はフック線長の後を追わなくちゃいけなかったんだけど、そんなことどうでもよくなったもんなぁ)
と、私はマンボーの変化体から元の体に戻ったことで、すっかり忘れていた大変な事を思い出してしまった。