
[前回の続き]
「やいコラ、お前!放しやがれ!!」
(・・・困ったなぁ・・・)
光の遺伝子の情報である光の玉を取りに帰ってきたカタツムリのボスを捕らえた。
そして、その細いもやしのような体を捕らえロープでグルグル巻きにして、さっそく尋問を始めた。
しかし、ボスはギャングでもない私やマンボーを甘く見て、これまで話したことしか話さない。
その光の玉を本当に欲しているのは、ボスではなく、海のギャングという組織の大ボスとのこと。
その大ボスは特別な変化体を持っていて、その変化体によってプロトコルランデブー(どんなものでも無機質な情報に変化させてしまう紙)を手に入れたのだ。
カタツムリのボスはその大ボスのことを、「あの御方」と呼んで、とても尊敬しているようだ。
そのためだろう、その大ボスのことについてもっと詳しく聞こうとすると、急に態度を硬化させて、「放せー!」とうるさいのだ。
これでは、この光の玉の中で情報として生きているリリーや集合マンボーをどうすることもできない。まして、これからのマンボーたちのことを想うと心配でならない。
本来なら、マンボーたちに後のことはまかせてフック線長の所に今すぐにでも戻りたいのだが、マンボーたちはあまりに頼りないから、私がまたやるしかない。
(その「あの御方」という人は、一体何が目的で光の遺伝子を求めているんだ?)
「フン、貴様ごときが知る必要はない。あの御方の考えておられることは、オレの考えなど及びもつかぬ。あの御方の言うとおりすれば、全てうまくいく。」
(しかし、その結果、リリーは光の遺伝子と共に光の玉に変えられるし、一体これからマンボーたちはどうすればいいというんだ?)
「バカヤロウ!マンボーなんてあの御方の考えておられることに比べりゃ、石ころみたいなもんだ。あの御方はこの世界に現れた神様だ」
(・・・困ったぁ・・・どうもこうも、マンボーは石ころで、そのマンボーにとって大切な光の遺伝子を奪うヤツが神様か・・・ギャングの世界とはそういうものか?よくわかんないや)
「オレの話を聞いてどうだ?お前も組織の一員になりたくなったんじゃねーのか?迷う必要はねー。オレが世話してやってもいいぞ」
(あのねー・・・組織に入りたくて迷っているんじゃないの!さっきからあなたがこっちの知りたいことを喋らないからどうしようか迷ってんの!!)
「いいか、オレは何があっても一言もしゃべんねーぞ!いい加減あきらめて、放しやがれ!!」
ほとほと困り果てた。力づくで話させようと思ったけど、相手のもやしのように細い体を見るとあまりに哀れで、力を与えると体が折れそうで気が気でない。マンボーたちも頼りにならず、相変わらずボーっとしている。
その時、私は『泣きたいのに、泣けない』気持ちでいっぱいだった。
と、海の中にいたにもかかわらず、背後から大きなうねりがやってきて思わずよろけた。何事かと、その方に目をやると大きな黒い影がこちらに向かって来る。