
[前回の続き]
フック長の柔らかい銃で打ち抜かれたことで、今まで重要なことは何も話さなかったカタツムリのボスの心が柔らかくなり素直によく話すようになった。
線長の尋問は続く。
「お前のボス、つまりX(エックス)というのはこの光の玉になった光の遺伝子を集めて何をするんだ?」
線長の手には、光の遺伝子がリリーの体ごと情報となってしまった光の玉が握られている。
「何をしようが、それは我々の勝手だろうが!・・・問題はそこだ。わかるか?つまり、X様はこの世界に散らばる光の遺伝子を全て手にすることで、完全で完璧な存在となるのだ」
「完全で完璧な存在??なんだそりゃ?」
困惑する線長に、カタツムリのボスは息がかかるくらい顔を近づけて言い放つ。
「つまり、神だ!」
線長とボスそして私の間に、長い沈黙が流れる。
「ワァハハハハハハ!」
突然、線長は沈黙を破り、お腹を抱えて笑い転げた。
「かーみー?ワァハハハハハ!そいつ ハハハ、カツラでも、ハハハハ、くれてやれ、ハハハハハハ」
(線長。言っとくけど、かみというのは、髪の毛のことじゃないよ)
私が線長をとがめる様に注意すると、線長は笑うのをやめた。だが、目が笑っている。
「わかってるよ。しかし、そのXってのは面白いヤツだな。神になるって本気で言ってんのか?オラ様が思うに、そいつはかなりユーモアのあるヤツじゃないか」
カタツムリのボスはしばらく黙ったまま我々を見つめていたが、静かな語り口で言った。
「それはそうだ。お前たちの反応は正しい。だが、X様のその特別な変化体を一度でも見たら笑っていられないぞ。あの御方は間違いなくこの世界を変えるだろう。この世界に『革命』を起こし、いずれ神として頂点に立たれる方だ」
その静かな語り口には、聞いていて何だか不思議な説得力があった。